2016/01/02

「2016年/注目飲食トレンドの方向性を読む!」

1.加速する飲食店の登場は、繁盛と衰退、陳腐化を繰り返す時代へ

近年の飲食業界の傾向としては、繁盛店と衰退がはっきりと分かれてきており、その一つの理由としては生活者のニーズやライフスタイルの変化やスピードがこれまで以上に早くなってきていることであろう。

光陰矢の如く(こういんやのごとし)過ぎ去った2015年の食業界を賑わしたメニューワードを挙げてみると、パンケーキ(人気の火付け役となったエッグスシングスの人気にあやかり数多くのパンケーキ店が開店している)、ポップコーン、「おにぎりらず」(漫画「クッキングパパ」に掲載されたことで世間に広まった「おにぎらず」がグランプリに輝いたこと)、ジャーサラダ、熟成肉、新鮮魚介(ノドグロやブリといった北陸グルメ産直の強み)、ダッチベイビー(鋳鉄製のスキレットを使い、オーブンで焼き上げるアメリカ発祥のパンケーキのこと)、また巣鴨「Japanese Soba Noodles 蔦」の一ツ星獲得はラーメン業界に大きな衝撃と話題となり、開店前の整理券販売で一日の集客を終わるという繁盛店の誕生など、さまざまな食ブームが巻き起こった年であったことは記憶に新しいところだろう。

さらに昨年はフローズンモア(マシュマロの中に冷たいアイスクリームを挿入し、表面をバナーで焦がしたニューヨークで人気になったスイーツ、などをはじめとした創作型スイーツの流行り、さらに健康志向の高い女性から熱い視線を受けたスーパーフード(一般的な食品より必須栄養素や健康成分を特に多く含む食品のこと)など、多彩なメニューがグルメシーンを賑わせたことである。

また表参道「ドミニク・アンセル・ベーカリー」、そして恵比寿「ユーゴ・デノワイエ」など様々な海外発の人気店(その他多数)が続々と日本へ上陸したのも大きな特徴的傾向と言える。

つまり、新しい時代の変遷や生活者のニーズに対応できない飲食店は衰退を余儀なくされるが、新しく発信される飲食店の数は(業種・業態を問わず)、これまで以上に多くなる傾向にあることを理解しておくことだろう。

2.まだまだ続く飲食店ブームとは何か。

特に注目される飲食店は、焼肉業態の存在であろう。日本の食に大きく影響を与えるであろうTPP(日本・米国を中心とした環太平洋地域による経済連携協定の意味であり、正式名称はTrans-Pacific Partnership(略しTPP)の交渉の締結など、その内容は、飲食店にとっては朗報であり、その中でも牛肉の関税率の引き下げは、益々牛肉市場を活性化し衰えを知らない肉ブーム(熟成肉や赤身肉といったトレンドが次々と誕生しその影響は日本中へ広がる傾向を見せており、規制緩和により、さらにフランス産とオランダ産に限って輸入が再開)を後押しするように、活性化の火付け役になるだろう。

特にリムーザン牛、バザス牛といったヨーロッパで絶大な人気を誇るブランド牛が(欧州牛は肉質のきめの細かさや、風味豊かな味わいが魅力とされている)輸入されるようになることなど、2016年もその人気を継続していくことが予測される業態の一つであることは疑う余地のない。
つまり肉ブームは一過性のものではなく、確実な業態として生活者に認知される飲食店に成長することは間違いないだろう。

野菜

これまで有機野菜やオーガニック野菜など新鮮な野菜を武器に飲食店の活性化を図る動きはあったが、最近では、本格的に野菜の生産から販売(飲食店)まで一貫した飲食店の流通スタイルが増加傾向にあり、レストランに限らず、野菜を武器にしたレストランや野菜バルなど女性客をターゲットに新しい切り口の飲食店が登場してくることは確かであろう。

3.低価格高付加価値の海鮮居酒屋の人気の強さ。

現在の居酒屋の繁盛のトレンドは、大きく二つの方向性に分かれているだろう。一つ目は、昔ながらの大衆居酒屋の復活であり、メニューはおでんなどの定番を揃えつつ、アジアンテイストのパクチー料理といったトレンドメニューも採用し、古き良き居酒屋文化を継承しながらも生活者のニーズにしっかりと応える柔軟さが魅力になっていることであろう。

せんべろ

この大衆居酒屋の人気の背景には、「せんべろ」ブーム(約1000円で酔っ払えること)や少しぐらい汚い店が、味わいがあって気軽に飲めるという価値観が約30~40代(男女)を中心に広がりつつあることだろう。
また「せんべろ」ブームに女性が乗りつつある理由は、チェーン店のサービスや雰囲気にない人情味ある雰囲気が大衆居酒屋の活性化に繋がっていることである。

さらに店内にトロ箱を並べ、大漁旗が掲げられたコテコテの内装の親しみやすさや、ゲストがテーブルの上にコンロで魚介類を焼いて楽しむ「浜焼きスタイル」の海鮮居酒屋がここ数年、急速な勢いで増えてきていることも注目される。

つまりここには、飲食店の総合的な完成度は低いが、魚介類の鮮度にこだわり、入口周辺の活魚のエンターテイメント性の訴求や野菜や魚中心のメニューの多くが、健康的で生活習慣病にもなりにくいという生活者の健康志向のニーズに適合したことに業態が活気づいている理由があることだろう。

4.進化する飲食店のバル化が進む。

パルマル

ここ数年のバル人気がさらに進化していることであり、最近ではさまざまな業態でバル化スタイルへ転換する傾向が進行しつつあることだろう。そのスタイルも、これまでのスペインバル、イタリアンバル、寿司バル、蕎麦バル、焼き肉バルなどメニューの違いはあるがものの、どの飲食店も、バルらしい開放感ある雰囲気を訴求していることであり、気軽に待ち合わせ場所で利用したり、少し飲みたいなど様々な生活者の食シーンやニーズに応えていることにある。

最近では、こうしたバルスタイルが高級店にも広がることが予想されており、2016年は、益々バル業態の新規参入や競争が加熱すると予測されている。
いわば、飲食業界の特徴として繁盛する飲食店はすぐに真似をして新しいスタイルを生み出すという風潮があり、まさに柳の下の二匹目のドジョウを狙うである。

しかし重要なことは、競合が激化する中で、いかにオリジナリティある個性を打ち出していけるかが、飲食店の成否を大きく左右する要因になることを忘れてはならない。

5.インバウンド需要を取り込む飲食店の発信。

日本食

これから大きな成長が期待できる分野がインバウンドを対象にした飲食店の業態発信であろう。2015年11月までに1800万人の外国人が日本に訪れた(日本政府観光局による)と言われているなど、日本中に広がる海外からの観光客の数は、年々増加傾向にあることである。

来る2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けてこの勢いは、さらに加速するだろうし、特に訪日の目的としてトップに上がるのはいわば「食そのもの」。

その光景も決して遠い先ではなく、日本全国このチャンスをつかむための準備をとることが大切であり、今後2016年にはグローバル対応の手を打っておこうとする動きが加速していることである。

これまでにインバウンド需要は、ほぼ全国の観光地に広がっていることもあり、インバウンド需要を取り込む手法としては、その観光者のニーズに合わせた飲食業態の企画や発信に力を注ぐ傾向が強く、特に日本料理に限らず、食を通した食の料理体験や食を様々なスタイルと組み合わせたものや観光者ニーズを配慮した業態開発を進めることが大切であろう。

今後も東京オリンピック以降もインバウンド需要が高まることを配慮すれば、飲食企業としては、利用支持層のターゲットを観光客に焦点を合わせた飲食店の企画発信をしていくことが、新しい飲食ビジネスを創造するヒントに繋がることは疑う余地はない。

Text by

竹谷 稔宏

ティファーズコンサルティング合同会社 取締役ディレクター

一般社団法人日本フードビジネスコンサルタント協会:理事
フードビジネスコンサルティング、レストランプロデュース資格認定講師担当
フードビジネスコンサルタント