2022/01/05

SDGsは、自分たちが積極的に関われることを見つけて追求する

 

理事の平澤です。私が主宰している空間デザイン会社”Designcafe™️”と建築設計会社”49 Architekt-Inc.の2社では、”国連の持続可能な開発目標(SDGs)に対し、建築&空間領域の環境デザイナーもしくは建築家としてSDGsで謳われている17のゴールのうち、事業ポートフォリオに重ね合わせながら、主に4つのターゲットに絞りこんで取り組んでいます。また単にオーソドックスな受託業務の中での取組だけでなく、デザイン会社ならではの柔軟な発想でプロトタイピング(検証モデルの可視化)し、アイデアを提示し、具現化していくことに対しても、受託業務と同じ比率で取り組んでいます。今回はその中から具体的な取り組みをいくつかご紹介します。

SDGs ゴール7” エネルギーをみんなに そしてクリーンに

スタジオ、サテライトで使用する電力の一部を再生可能エネルギーに転換

Designcafe™️では、スタジオやサテライトで使用する電力のクリーンエネルギーへの転換を進めています。再生可能エネルギーによって発電された電力を積極的に買取、活用することによってCO2削減を試みており、2019年以降は約25%を再生可能エネルギー由来の電力へ転換しています。金沢に計画しているサテライトスタジオ(2022年オープン予定)では建物そのものをパッシブ化することで熱効率を高め、化石燃料由来のエネルギーに極力頼らないCO2削減の取り組みとして計画しています。

社用車を電動車にチェンジし、再生可能エネルギーを活用

また、使っている社用車(自動車、スクーター)も電動車にチェンジし、再生可能エネルギー由来の電力で活用しています。日本における再生エネルギー発電は限界がありますが将来的に小型核融合炉が実用化されれば、クリーンなエネルギーが安全安価に供給されます。これらの電化へのシフトは、インフラコストに直結するため、製造業では喫緊に取り組むべきだと考えます。

SDGs ゴール8” 働きがいも経済成長も

DESIGNING-Dxによる、働く時間を有意義に使う仕組みづくり

働いている時間は有限の資産です。Designcafe™️ではDESIGNING-Dx(デザインのデジタルトランスフォーメーション)に積極的に取り組んでおり、最新のクラウドとコミュニケーション&デザインツールを積極的に導入し、リモートでもストレスにならないコミュニケーションと難易度の高いデザインワークの省力化に取り組んでいます。 具体的にはダイレクトモデリング3D-CADで直感的にデザインを描き、生成したソリッドデータをそのままBIM(ビルディングインフォメーションモデリング)や3Dプリンターへ移行。施工の現場やプロトタイピングに応用しています。また、自動切削機や5軸NCルーターを活用する制作会社へデータを渡しそのまま製作することも可能になりました。3Dそのものは目新しくありませんが、3Dを直感的に扱えることはとても大きく、またそのデータをさまざまな場面でそのまま使えるメリットは計り知れません。これらによって、ストレスの軽減化とデザインワークの省力化で得られた時間を創造と洞察に当てクリエイターとしてやりがいを感じる仕組みを構築しています。またこれらで生まれたデザインアセットをクラウドで資産化し、チーム内で共有することで新しい提案に繋げ、受注力強化に繋げています →Designcafe™️が取り組むDESIGNING-Dx

知見を高め、知識の共有化。共有知のプログラム化

また、海外研修などの仕組みを通じて知見を高めることによって、社会や世界に対しての関心を持ち、偏見をなくし、自分たちの職能が社会にいかに寄与していくかを考え学ぶ場として海外研修旅行を中心とした研修プログラムを実施しています。→Designcafe™️の海外研修旅行

SDGs ゴール11” 住み続けられるまちづくりを”

既に開発された技術を使いながら、必要数に応じてカスタマイズできる住宅空間
リターナブル(再生可能)な素材の有効活用
リノベーションやコンバージョンへの積極的な展開

ゴール11の中のターゲット3である「2030年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、すべての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画・管理の能力を強化する」に対し適切なアプローチと持続可能な仕組でできる建築&空間デザインを模索&実行していきます。具体的には「簡便な仕組みと既に開発された技術を使いながら、必要数に応じてカスタマイズできる住宅空間」や「素材ロスの少ない建材の活用、リターナブル(再生可能)な素材の有効活用」です。 また、連動して日本政府の科学技術政策「Society 5.0 = サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」が掲げるスマートシティ構想に対しても独自に建築や空間活用のアイデアをビジュアライズし、提案しています。→スマートシティや食のモビリティー、フードロスに対応する、Designcafeのコンセプトデザイン

ex1)  Smart Concept House “CH-101” は「持続可能性」「拡張性」に主眼を置き、住宅を建設する際に使用する”建材”の持続可能性と住宅の宿命でもある家族構成の変化に対応する拡張性や可変性に着目、可能性を示したものです。

別な視点では、人口減少時代に突入した日本の住宅は他の先進国と比べ住宅総量規制が無く、新築物件は明らかに造り過ぎであり、新築ほど価値があり、古くなると(30年が目安)ほぼ建物としての価値を失います。SDGsの達成目標となる2030年の日本の人口は、65歳以上の老人が1/3を占め、2020年から比較して人口比率で一割、全国で1200万人減ります。これは、2029年の段階で現在の九州全体の人口が日本からいなくなる計算です。持続可能性と住環境をコントロールしていく観点で見れば、他の先進国のような住宅総量規制とコンパクトシティ化(職住環境を近接化し、都市をコンパクトにする)は避けて通れない喫緊の課題です。都市を中心に飽和している空き家(中古住宅や中古マンション)の活性化は都市ストックの活用、担保価値上昇で個人に資産を持たせることによる資産効果、資源の有効活用と持続可能性の観点でも有効であり、人口減少に合わせた施策に適応できる可能性を持っています。いよいよ政府の制度化も始まりました。Designcafeが住環境デザインにおいて、リノベーション(改修による価値再生)やコンバージョン(用途変更による価値再生)に力を入れていくのはこのような理由があるからです。今あるものを手入れをして育む事が大切だと考えます。

SDGs ゴール12”つくる責任 つかう責任”

ゴール12の中のターゲット5である「2030年までに、予防、削減、リサイクル、および再利用(リユース)により廃棄物の排出量を大幅に削減する。」Designcafeのポートフォリオの中では「飲食店舗デザイン、料飲ビジネスの空間デザイン」や「展示会デザイン、イベント空間デザイン」が該当します。

「飲食店舗デザイン、料飲ビジネスの空間デザイン」では、屋台や移動販売など食のモビリティによる、外食の活性化やフードロス低減への取り組みを行っています。同じ店で仕入れる食材をできるだけ廃棄しなくて済むように、テイクアウトやお弁当などのフードリサイクルやフードドライブに積極的に取り組んでいるお店に対し、安価で導入できるテイクアウト専用屋台の開発を行なっています。また、問題になっているマイクロプラスティック問題に呼応し、その多くを排出している料飲ビジネスに対しても、廃棄しているパッケージ容器をライメックスやバガスを使用した再生可能素材やアサヒビールが提案&実現させている食べられる容器”モグカップ”などにチェンジするための啓蒙活動と積極的な提案を行っています。

→食のモビリティー、フードロスに対応する、Designcafeのコンセプトデザイン

展示会デザイン、イベント空間デザイン」では、イベント終了後の廃棄物をいかに無くしていくか? 資源の持続可能性の観点で課題を抱えています。リサイクルでの再生は現状でも各建材メーカーが積極的に取り組んでおり、Designcafeでも積極的に採用し活用していますが、これは受動的な取り組みです。Designcafeへの問い合わせが多く、デザインの自由度が高い木工造作系の展示会ブースの殆どはリユースできずに廃材となり、ニーズとエシカル的なマインドの間で苛まれていました。

そこで、この中でも特に需要があるコンパクトな1~4小間サイズ(9㎡〜36㎡)に特化した木工ブースをパッケージ化し、業態タイプ別にカスタマイズできるブースをイベント制作チームである”EXTRADREI,LLP“と共に開発しています。各パーツを組み合わせる事で、展示属性に即したブースをつくることができる上、新規の造作箇所をゼロにする事で廃材の排出量を押さえる試みであり、また造作大工の省力化にも貢献できるアイデアです。また、規模のある展示会ブースやイベントにおいても、再生可能なシステム材や年間出展計画に基づいたブース流用などを積極的に提案し、廃棄物の削減に努めていきたいと考えています。

SDGsにどう向き合うか?

SDGsは、経済発展を前提とした持続可能性の追求だと捉えており、自分たちの暮らしを守りながら解決策を図っていく現実的な取り組みです。自分たちが深く関心を持ち、関与できるターゲットに絞った上で徹底して取り組むことだと考えています。得意先から委託される通常業務の選定においても、その振る舞いがデザイン委託先の選定にもつながっている実感があります。環境問題やグローバル化などVUCA(不確実性)の時代を生きている私たちにとってはSDGsは重要な関心ごとです。そして、SDGsもDxも経営者やリーダーが率先して進めていくことが重要であり「自分たちがどのような未来を描いていきたいのか?」につながっていくのだと思っています。


本コラムは、月刊厨房2021年12月号(一般社団法人日本厨房工業会)に掲載された内容を加筆し編集したものです。

Text by

平澤 太

理事 / 株式会社デザインカフェ

平澤太:日本フードビジネスコンサルタント協会

環境デザイナー / デザインストラテジスト
専門は商環境デザインとコミュニケーション空間のデザイン。変化するコミュニケーションの形態とアクティヴィティーの関係性に着目しながら、体感から得られる印象と効果=インタラクションを重視したデザインを展開している。アジアデザインアワード、DSAデザインアワード、SDA賞、CSデザイン賞、JCDデザインアワードなど受賞歴多数。http://designcafe.jp