2021/04/30

飲食店がテイクアウトを行う際の許可や調理の注意点

コロナ禍により利用者が大幅に減少した飲食店は、朝食営業を始めたりするなど、2毛作、3毛作へと新たな時間帯に活路を見出しています。また、営業していない昼の時間帯を希望者に貸し出すシェアーレストランも双方にとってメリットがあります。そのように試行錯誤しながら店舗の存続のため必死で日々努力をしている飲食店ですが、比較的容易に販売できる弁当などのテイクアウトやデリバリーは、多くの店舗が実施していますし、ゴーストレストランに転換する企業もあるほどです。

そのように、弁当などの販売は、容易に販売出来るからこそ落とし穴もあり、大きなリスクを伴っていることを忘れてはなりません。昨年には飲食店が医療従事者に向けて支援で届けた弁当から食中毒が発生するなど、多くの食中毒の事例も発生しています。このコラムでは飲食店がテイクアウトを行う際の許可や調理の注意点などをまとめたので参考にしてください。

営業許可関連

まずテイクアウトを行う際ですが、飲食店営業許可の範囲内での販売であれば、新たな許可は不要です。しかし、販売する商品によっては別の許可区分になることもあるため、気をつけなければなりません。いくつかの例として1:飲食店で自家製パンを焼いて店内で提供しているものをテイクアウトする場合は別に菓子製造業の許可が必要になります。2:飲食店の店先(路上)で焼鳥などを焼いてテイクアウト販売することは認められていません。3:弁当の販売について、注文を受けてから調理または容器に詰めるなどの対面販売をする場合は、飲食店営業許可の範囲で販売可能ですが、事前に調理・製造した弁当を店内外で陳列し販売する場合は、「名称」「添加物」「アレルゲン「保存方法」「期限表示」「製造者」等の安全上必要な項目の表示は必要となります。また、弁当の中身が見える透明容器と不透明容器(または包装している状態)では食品表示が異なるので気をつけておきましょう。

そのほかにも、自家製ハム、ソーセージ、乳製品などの販売は別の許可が必要になり、設備上の条件もあるため容易ではありません。このように、飲食店がテイクアウトを販売する際にはどのような食品をどのような方法で販売するかにより必要な許可が変わってくるため、最寄りの保健所で確認する必要があります。また、仕入れたワインや日本酒を開栓せずに販売することは本来NGですが、新型コロナウイルスの影響の特例として、飲食店も税務署申請を行うことで期限付き酒類小売業が許可されていました。しかし、これも令和3年3月末で期限が終了となり、4月以降は、酒類販売業免許を取得せずに販売すると罰せられるので、気をつけましょう。

衛生管理について

飲食店が飲食業営業許可の範囲内でテイクアウトの商品を調理・販売する際には、安全安心に心がけ、絶対に食中毒を起こさないための対策を行う必要があります。調理エリア、調理方法、調理手順、衛生管理、テイクアウトに適した食材を使用した料理内容、保存方法や提供方法などを充分に考えておく必要があります。東京都福祉保健局では、テイクアウトや宅配を始める飲食店に向けて、必要な衛生管理の注意点をホームページで公開しているので、参考にしていただきたいと思います。テイクアウトや宅配される食品は、店内で食べられる食品と比べ、作ってからお客様が召し上がるまでの時間が長くなるため、普段以上に衛生管理に注意する必要があります。食中毒予防の3原則「つけない」「ふやさない」「やっつける」を徹底しましょう。

つけない 普段から実施している一般的な衛生管理を徹底!

・調理に使用する器具等は、使用用途により使い分けを行い、洗浄消毒をしたものを使用しましょう。
・調理従事者の体調管理を徹底し下痢・嘔吐・発熱等の症状がある場合は調理に従事する事を控えましょう。
・手洗いを徹底しましょう。

ふやさない 放冷・冷却・できるだけ早く提供!

・調理後の食品は長時間常温で放置せず、適切な温度で保管・運搬しましょう。
・放冷が必要な食品は、すぐに冷却しましょう。
・提供後、すぐに食べるようお客様に伝えましょう。

やっつける よく加熱!

・加熱する食品は中心部までよく加熱しましょう。
・生肉、生卵、刺身等の生ものの提供は避けましょう。

出典:東京福祉保健局 テイクアウト手引き(PDF)

これからの時期は気温が上がり、テイクアウトに取り組む飲食店にとっては食中毒のリスクが高まる季節になります。基本的なテイクアウトの調理ノウハウを理解してもらいたいと業務用食材販売のanemosu(アネモスhttp://www.anemosu.co.jp/)が「STOP食中毒キャンペーン」を開始し、注意点を記したチラシの無料ダウンロードを行っています。こういったものも活用し、安心・安全なテイクアウトのサービス提供を行ってください。また、テイクアウトの販売を活かし、お客さまとのコミュニケーションにも一工夫をすることで、店内利用への促進にもつなげてもらいたいと思います。

Text by

水谷建治

理事 / 株式会社テイスティーズ

水谷建治

フードビジネスコンサルタント / レストランプロデューサー
21歳で独立。有限会社テイスティーズを設立し、ファストフードショップ、居酒屋、創作料理店、カフェ、無国籍料理店、ラーメン店、郷土料理店、バルなどを多数展開する。現在は、フードビジネスコンサルタント、飲食店のプロデューサーとして全国に数多くのクライアントを持つ。日本フードコーディネーター協会副理事長、FCAJ 認定 エグゼクティブフードコーディネーター、ヒューマンアカデミー非常勤講師、赤堀料理学園非常勤講師、香川県地産地消推進委員を歴任。