2020/08/05

Withコロナ時代に飲食店が対応すべき顧客接点のデザイン

Withコロナを見据えた飲食店が対応すべき顧客接点のデザインとは、主に3つのポイントに分かれます。1つ目はインフォメーションデザインで”自店のWebサイトやSNS等のユーザー体験型デザイン、チラシやメニューフライヤーなどのグラフィックデザイン”。二つ目は、テイクアウト&デリバリー(以下、T/O・Del) 向けの包装で使用するパッケージデザイン。三つ目は、飛沫感染対策や給換気(陽圧、陰圧)対応、対面レイアウトの見直しなどの店舗デザインになります。

三つ目の店舗内対策に関しては、早い段階から対応に追われたお店も多く、急ごしらえとはいえ対策の進んだ印象を持ちます。そこで今回は、コロナ渦で対応しておきたいインフォメーションデザインとパッケージデザインについて考えていきたいと思います。

1: 自店のウェブサイトのすすめとSNSの活用(インフォメーションデザイン)

飲食店のプロモーションで最も多いのは食べログぐるなびに代表されるフードポータルの活用です。地域毎や利用したいお店の業種毎にソートされた情報は、利用者からすると使い勝手が良くアプリの利用率も高く、中にはまとめページもあり、編集による充実した情報は、検索する時間を減らしたいサラリーマンやOLのニーズとマッチしています。そんな中で今回のコロナ渦で進んだT/O・Delの導入は、敷居の低さから一気に広まりましたが、フードポータルでの限られた情報発信は、比較されるがゆえに良くも悪くも店側のスタンスが垣間見れてしまいます。そこで検討したいのが自店のウェブサイトの作成(既にある場合は見直し)、レスポンシブ対応とローカル検索、SNSの連携です。特に下記で一つでも該当する場合は、効果(アクセスや認知など)が上がる傾向にあります。

味に自信がある。
食材や製法にこだわりがあるなど、独自性を持っている。
エシカル的なマインド、フェアトレードなどに関心があり、店の何かしらに反映している。
その場所に愛着がある。
デザインにこだわりがある(店舗、メニュー、各種ツール、カトラリーetc)
価格に不満がある(もう少し単価をあげたい

自店のウェブサイトをつくるメリット → お店のこだわりなどを丁寧に伝えたり、掲載情報を作り込める事が、最大のメリットであり、フードポータルのような項目毎の文字数の制約を受けることもありません。自前のメディアを持つ考え方を最近ではオウンドメディアと呼びますが、フードポータルを利用しつつ自分たちの発信拠点を持つ事は長期的に大切で、最近の検索エンジンの飛躍的な向上を考えると避けて通れません。また、お店の情報を拡散させる意味でも、自店ウェブサイトを持つ事であらゆる媒体からのアクセスを自店に集約させることができます。では、具体的にどのようにデザインしていくか?を整理してみます。

コンテンツマネージメントシステム(CMS)でのウェブサイトの構築

CMSは、ここ10年でかなり進化しており、小規模に構成するサイトでも導入が進みました。有名なツールとしてはWordPress(以下WP)があり(このFBCJのウェブサイトもWPで構築しています)ツールの使用そのものはオープンウェアのため無料です。このツールを活用しT/O・Delのようなケースでは、日替で情報を更新することが可能になったり、お店の様子や混雑の状況なども簡単に発信することができます。また、SNS (後述) との連携も容易なので、即時性と深度のある情報発信が低価格で導入できます。重要なのは、丁寧な写真を使用したデザインで煩雑にならないシンプルな構成と見え方が望ましいです。プロのカメラマンに撮ってもらえれば素敵ですが、スマートフォンで編集できるアプリも充実しているので、まずは自分たちで日常的な雰囲気を意識した食事やお弁当などの写真を撮って使ってみてください。

スマートフォン対応(レスポンシブ)とローカル(地域)検索

飲食店のウェブサイトに限った話ではありませんが、昨今のウェブアクセスはスマートフォンが中心であり、特に飲食店探し、ランチ先探しの際はスマートフォンで検索するケースがとても多くなっています。その為スマートフォンに対応したウェブページの構築は避けて通れない重要な課題なのですが、上記のWPはレスポンシブ用の無料プラグインキットが充実しているので使わない手はありません。スマートフォン向けのウェブサイトの殆どはレスポンシブでの対応を行っており、Googleも推奨しています。

そして、レスポンシブとセットで重要なのがローカル検索です。Googleの場合(もしくはGoogleの検索エンジンを採用しているYahooなどのポータルも含め)スマートフォンアクセスと通常のPCアクセスでは同じ検索ワードでも表示される結果が異なるケースが確認されていますが、これは「今いる場所」という軸が加わりローカル検索の精度が飛躍的に上がっているからです。この対応としては「店舗名+業種+地域名」のようなウェブサイトタイトルに設定することで簡単に反映することができます。「鳥山、焼き鳥|日本橋人形町」のような感じです。名物メニューがあれば合わせて入れても効果的。ウェブサイトのタイトルとディスクリプション(検索結果のタイトルの次に表示される説明)は非常に重要なので、この二つのテキストで自店の魅力を伝えられているかどうかを意識すると良いと思います。最近は町おこしや地域ポータルの充実でお店のサイトを無料掲載する媒体もあり、メリットはとても大きいのです。

参考になるお店のウェブサイトをいくつかご紹介します。

2bananeira:横浜にある菜食同源をポリシーに、できるだけ地産地消の無農薬・無化学肥料の露地野菜を使った料理を提供。お弁当の取り扱いもあり。

HAMAHOUSE:日本橋浜町のコンプレックス内にあるカフェ。メニューや施設全体、イベントなどを発信。地域性を大切にしており、コロナ渦の影響で期間限定で販売可能になった酒類販売もイベントと合わせて告知しています。

伊良コーラ:高田馬場にあるクラフトコーラ専門店。生のコーラナッツ・カルダモンやナツメグなどのスパイスと柑橘類を混ぜ合わせているクラフトコーラ専門店。毎週土日限定で、フードカートで移動販売などの情報も掲載しています。通信販売にも対応。

SNS連携(Instagramとtwitter)

SNSは多くのユーザーが愛用し、ハッシュタグによる細分化された情報整理は、カテゴリーと地域性が命の飲食店のプロモーションにとって親和性の高いツールです。どこから手をつけて良いかわからない場合はInstagram(インスタグラム)twitter(ツイッター)からスタートしましょう。写真、テキスト、拡散と言った観点で判断することが重要です。まず写真ですが、写真は全ての食の情報を可視化する重要な情報伝達の手段なので、既出の通り自分たちで日常的な雰囲気を意識した食事やお弁当などの写真を撮っていくことが重要です。日常を少しだけお洒落に見せること。インスタ映えという言葉からも分かるように、現実感が垣間見れる、玄人はだしの雰囲気のある写真を投稿している方も沢山おり、写真の見せ方の勉強にもなります。

SNSは即時性というメリットがある反面、一度掲載したエントリーが相手型のタイムラインに止まらない二面性がある為、自店ウェブサイトにもSNSページのリンクを貼り、意識的に「通ってもらう」仕組みも大切です。その為、テキストはあくまでも拡散を前提とした要点重視型のテキスト、T/O・Delのお知らせであれば「お弁当の中身や食材、こだわりのポイントなど」が記載されていると閲覧率が高まります。また、Twitterの場合ヘッダー写真を掲載することができるので、季節やイベントなどでこまめに差し替えるのも有効です。拡散していく上で重要なハッシュタグは、T/O・Delであれば #お弁当 #テイクアウト #場所 #ランチ #カレー(メニューの種類や名前など)に絞って、5つ程度目安に設定すると良いかと思います。これは閲覧している人たちにもみてもらうことを前提としている為で、多く入れても読みきれず、カスタマーフレンドリーにならないからです。欲張らずに、見てくれる人達に対してわかりやすく提示することが重要です。

また、アフターコロナを見据えてインバウンド向けの対策をもと言うことであれば、簡単な英文があると良いと思います(特に場所、メニュー名や使われている食材表記など)。SNSは、自店ウェブサイトよりも先に海外の人の目にするきっかけになることが多いので、SNS⇄自店ウェブサイトでインタラクティブ(双方向)の流れを意識するとアクセシビリティが飛躍的に高まります。SNSか少しそれますが、来日観光客が頼りにするツール「トリップアドバイザー」をSNS代わりに使ってみるのも面白いですね。

参考になるSNSアカウント(自店のウェブサイトとの連携の上手なお店も)

Twillo:都内各所に移動する屋台バーのTwitterアカウント

Bistro JO:銀座のビストロ。Twitterアカウント。様々なお知らせを告知。
Bistro JO:銀座のビストロ。写真の日常感がとても素敵です。Instagramアカウント。

青おにぎり:京都のおにぎり屋さん。店主のイラストやおにぎりの作り方など。
青おにぎり:Twitterアカウント。様々なお知らせを告知。
青おにぎり:Instagramアカウント。書やカリグラフィーで日常をお知らせ。

2: テイクアウト&デリバリー向けの包装で使用するパッケージ

今回のコロナ渦で一気に食のメインストリームに躍り出た感のあるテイクアウト&デリバリー市場(以下T/O・Del)。当協会の専務理事でマーケティング担当の竹田のコラムにT/O・Delにおいての対策のポイント(今こそ考えたい消費者視点のテイクアウト・デリバリー「売れる化」対策)がエントリーされていますが、パッケージデザインに関しても同じ視点で考える必要があります。以下竹田のコラムからの引用ですが、

弁当以外の総菜では、量が多すぎると注文しづらくなります。 T/O・Delでは「1名での利用」も多いと思いますが、もともとこの「ひとりめし」は首都圏の夕食で20%以上、街によっては夕食需要の40%近くを占めます。特に女性の「ひとりめし」は急増しており、ここ3年間で14%も上昇しています(ホットペッパーグルメ外食総研調べ) 例えば一人でのランチ利用が後々のグループや家族での利用につながります。

届いた時の期待感、フタを開けた時の高揚感は重要です。必ずしも贅沢な容器を使うということではありません。見て華やかな、楽しい演出、凝縮感が感じられると効果的です。「原価が上がる」…という事情も分かりますが、原価に見合った対価で売れる商品をいかに作るか?が重要ではないでしょうか? 縮小均衡でありきたりの無難な商品で戦うには厳しい市場環境と考えましょう。竹田クニ

この考え方をパッケージデザインの視点で捉えると下記のような事を考慮する必要があります。

1:ポーションサイズの検討。分割されたパッケージか一体型のパッケージか?
2:T/O・Delのいずれかによってパッケージの形態を考慮する必要性。
3:らしさ、の追求といい意味での印象の裏切りを。
4:エコロジカルで環境配慮を。

導入上の優先順位は上記の順番になりますが、どれも大切です。下記にて詳しく解説したいと思います。

1:ポーションサイズの検討。分離されたパッケージか一体型のパッケージか?

お弁当の場合、メニューの構成によっては「ご飯とおかず」「ご飯とカレー」と言った具合に、お弁当の内容物を分けるケースと「海苔べんとう」「天丼」「親子丼」「サンドイッチ」など分けなくてもパッケージ化できるケースが想定できます。ポーションのサイズは、お弁当の主要購買層によってポーション量が異なると思いますが、ボリュームを出したい「ガテン系」の場合はなるべく分割せずに一体型の容器の中で「ご飯とおかず」だけ分割されている容器を使いおかずの並べ方で工夫するとボリュームが出ます。お弁当の容器に関しては、あらゆるメーカーから既成容器が販売されているので見比べると良いかと思いますが、ボリューム重視の場合はお箸が容器の外側と揃っている(ビルトインした状態)が買い手からすると親切です。モールドパック型であれば蓋と容器が一体になっているので、店舗側の管理もしやすく、見た目も良いです。

モ-ルドパック弁当MP-8 無地   
モールドパックの一例:既成のお弁当箱。バガスを原料にした環境配慮型容器。 燃えるごみとして処理できます。(販売:容器スタイル

ポーションが少なく、ご飯とおかずを分割したい場合は、分離型パッケージで小分けにした方が対応しやすい場合があります。その場合は同じ形状のお弁当箱を2つ使って提供すると少しリッチな印象になります。また同じ形状ですから店舗側の在庫管理も容易になり、シェアなどのバリエーションにも対応しやすくなります。

  
上下で分割している嵌合タイプのお弁当箱(左)と紙製の組み立て式のお弁当箱の事例(販売:容器スタイル)アプローチは異なりますが、右の場合はご飯モノにトッピングが多い場合などに。

2:T/O・Delのいずれかによってパッケージの形態を考慮する必要性。

これは、販売する形態によってパッケージを考慮する必要があるという意味になりますが、例えばお弁当の場合、陳列されているお弁当を手にとって提供する場合は当然ながら中身を吟味することになる為、見えることが重要になります。サンプルや写真メニューから選ぶ場合は、中がクローズしていても問題なく、提供の方法によってパッケージデザインを考えないといけません。T/Oの場合は、調理してから提供するまでの時間を考慮する必要があり、メニューによっては保温を考慮する必要もあるかもしれません。またボリュームがわかりにくいと言った声が散見する為、ウェブサイトでテイクアウトメニューを公開する場合も「サイズが比較できる身近なモノ」を写真の中に忍ばせ、ボリューム感がそれとなく理解できるようにする事も大切です。

3:らしさ、の追求でいい意味での印象の裏切りを。

らしさ、の追求はコンビニ、大手テイクアウト専門店との差別化だけでなく、近隣にひしめく他のT/O店との差別化を意味します。ここで必要になってくるのは、お弁当箱を包む包装紙やショップカードなどのT/Oツールで、グラフィックデザインが必要になってきます。グラフィックデザイナーに依頼するとなると一気に敷居が上がるような印象がありますが、デザイナー側も今回のコロナ渦で自分ができる社会への貢献を模索している人が多く協力的です。既出のSNSなどで募っても構いませんが、依頼先として最も良いケースは「自分の店を利用したことのあるデザイナー」です。常連であれば最高ですが、自分の店の良さを知ってもらっている事はとても大きく、クリエイターマッチングよりも感度の高い提案を受けやすくなると思われます。事前に作例などを見せてもらい、依頼先として最適か見極めても良いかもしれません。

お弁当箱、ランチボックス:既出の通り、既製品で準備できます。オリジナルで作る事も可能。
包装紙:オリジナルでデザイン。紙の印刷なので安価に準備できます。
シール:包装紙の代わりにシールプリントでオリジナリティを出す事もできます。
ショップカード:既に用意されている場合は、裏面などに一言手書きのコメントスペースがあるかどうかを確認してみてください。ない場合は、お店の情報(ロゴや住所やURL)と合わせて、コメントスペース用の罫線を入れる事で書きやすくなります。お礼や常連さんへの感謝など心で伝えることができますね。

日本橋人形町の親子丼発祥のお店「玉ひで」のテイクアウト用親子丼(箱なし1500円)。

日本橋人形町の親子丼発祥のお店「玉ひで」のテイクアウト用親子丼(箱なし1500円)。既成の容器に包装紙の組み合わせ。ちなみに箱ありは1600円。自宅や会社の同僚で利用するケースと来客用として利用するケースを想定して、パッケージを2種類準備しています。老舗らしい配慮です。また箱なしでも包装紙で包まれており、玉ひでの親子丼誕生の歴史が書かれています。読んでいて楽しいですし、親子丼発祥のお店であることを知らない方は驚くと思います。

いい意味での印象の裏切りとは、例えば「もっと量が少ないと思った」や「蓋を開けてみたときの高揚感」などのアフォーダンス上での裏切りです。予想を超える仕掛けになります。メニューの工夫だけでなく、パッケージやデザインからのアプローチでも構わないのですが、大切なのは「食を楽しんでいただくこと」。このエントリーの執筆時(2020年8月2日)では、明日から東京都内の飲食店の時短営業が決定しています。これだけ飲食店での食事が規制されているわけですから、T/O&Delに関しても楽しむ要素というのは抜け落ちて欲しくないものです。

4:エコロジカルで環境配慮を。

このコロナ渦での話なので、優先順位としては下がるかもしれませんが、このタイミングでT/O&Delを実施するお店の方達には、ぜひ環境に配慮したパッケージの利用を促進していただきたいと思っています。エシカル的なマインドもありますが、マイクロプラスティック問題の解決、特にプラスティック製の容器を大量に使う飲食&料飲業界への対応は待った無しの状態です。上記でも取り上げた、既成のランチボックスやお弁当容器でも環境配慮型の商品が出回っており、導入の敷居も下がりました。バガス製のパッケージやバイオマスプラスティックや木製のフォーク&スプーン、植物の茎を利用したストローなど利用できるものはたくさんあります。

●魅力の抽出とファンの共感を得られるように。

いかがでしたでしょうか。デザインからのアプローチでしたが、少しの手間をかけるだけで自店の魅力を向上させることができます。重要なのは、お客様がファンになってくれるように、気持ちに寄り添って、あくまでもカスタマーファーストで考え実施していくことです。新型コロナウイルス感染症だけでなく、今後新たに起こるであろう感染症への対策が顕在化した今回のコロナ渦。次回は、店舗デザインの観点でのコロナ対策について事例も交えて掘り下げて行きたいと思っています。

Text by

平澤 太

FBCJ 理事 / 株式会社デザインカフェ

平澤太:日本フードビジネスコンサルタント協会

環境デザイナー / デザインストラテジスト
変化するコミュニケーションの形態とアクティヴィティーの関係性に着目しながら、体感から得られる印象と効果=インタラクションを重視したデザインを展開している。アジアデザインアワード、DSAデザインアワード、SDA賞、CSデザイン賞、JCDデザインアワードなど受賞歴多数。